塵クジラの海 ★★★★★

塵クジラの海 (ハヤカワ文庫FT)

塵クジラの海 (ハヤカワ文庫FT)

一年前の刊行。30年前に書かれたスターリングの処女作。スターリングだから本来なら即読みしているはずなのだが、ハヤカワSF文庫じゃなくてFT(ファンタジー)だから躊躇してしまった。表紙もファンタジー色バリバリだし...
遅い購入に踏み切ったのは、訳者:小川隆のあとがき。
「これで、二十代に翻訳家を志したときに訳したいと思っていた三冊のうちの二冊までを訳すことができた。」
え。小川先生がそこまで言うような本なの? と考え直し、購入。
この本の属するジャンルは、サイエンス・ファンタジーと言うらしい。代表作は「スター・ウォーズ」だそうな。スペース・オペラの伝統を引きずるジャンル、らしい。まだ良くわかってない。
だって、これ、俺的にはどうみてもSFだもの。なんでFTから出るわけ? ハヤカワの政策がイマイチ理解できない。スターリングといえばサイバーパンクだから、真っ向違うジャンルのサイエンス・ファンタジーをSF文庫で出せない事情があったと考えるべきか。実際、自分もそれで買わなかったわけだし。読み終わったら帯に「こんな面白い本、どうして見逃していたんだろう?」と書いてあった。orz
内容についての感想は、他所でも書いてしまった。中身の引用までするほど、なぜか主人公に感情移入した。こんなことはほとんど滅多にない。一言で言えば、SF版『白鯨』とか、結ばれない異性人カップルの悲恋とか、異世界海洋小説とか言った感じのキーワードで語られてます。
内容についてよりも売り方についての意見が多くなってしまった。本国でも売れなかったみたいだし、日本も売れなかったんだろう。あとは『SFが読みたい!』の順位がどの辺にくるか。
私見では『万物理論』に匹敵。ちなみに大森望氏は★★★1/2だった。この手の本にはキビシイ。

(追記)
アンシブル通信の大森望インタビューより。

早川書房で言うと、FT文庫の《プラチナ・ファンタジイ》は事実上、翻訳SF叢書だけどね。ああいうものがSF文庫から出てこないのが問題と言えば問題。結局はマンパワーの問題だと思うけど。

西島:SFもFTも同じ会社から出てるのに、レーベル間の壁が厚い(笑)。

やっぱり...