ヤバい経済学[増補改訂版]

ヤバい経済学 [増補改訂版]

ヤバい経済学 [増補改訂版]

山形浩生がお薦めしてたので前から読みたかったのだが、未だに図書館でも人気が高くほぼ半年待ちだった。
原著名はFreakonomicsだから、freakとeconomicsの合成なので、「ヤバい」と「経済学」がもっともっと混じった感じなのか。何を言いたいかと言うと、本国でもこれは経済学じゃないよねという意見があるのがさもありなん、という内容。統計的手法を使った社会学? それこそが計量経済学? 門外漢ゆえよくわからない。
でも、著者(レヴィット)の言う、世の中は金銭的インセンティブだけじゃなく、場合によっては道徳的インセンティブや社会的インセンティブを重視して人間は行動するという、広義のインセンティブは本書の軸になっており、その点においてやっぱり経済学なんだろうと思った。初っ端の例として、保育園の遅刻罰金の額が安すぎという話が出ている。あと、道徳的インセンティブって、個人的な、内的な、信念のようなものを勝手に想像してみた。この辺は、もっと勉強してみてもよいな。
本書の中で一番有名なテーマらしい、妊娠中絶が増えると犯罪が減る、という話。これ、真偽がどうとか、賛否がどうとか、色々な話があるみたい。増補改訂版の「オマケ」で追加されていた、ネタがでかすぎて各人が勝手に引用するから意外と著者自身は批判されなかったというコメントが面白かった。一例としてオマケに加えられた、保守派の議員が失言した内容へのツッコミ。ある人種を中絶したら犯罪が減るってというミスリード。さらに、原著論文の統計処理に対する反論の反論はプロ向けの内容。これもオマケ。理系頭としては、元のデータが信用出来て、統計処理は一意的に決まるはずだから、結論は変わらないんじゃないのと思うけど。某有名ブロガーさんの日本国内データを用いた反論はさすがに緩すぎるんじゃないかと思った。中絶−犯罪ネタは増補改訂版で補強されたところが多そう。
あと、なぜか今頃旬な題材になってしまった相撲の八百長の証拠。でも、7勝の千秋楽の星の貸し借りって、日本人的には前から常識ではあったな。
残りは、学校の先生のテスト結果偽造、不動産屋販売価格の仕組み、ベーグル屋無人販売の万引き統計、麻薬密売の経済、脱税。趣き変わって、教育、子供の名前。と並べて書くと、犯罪、不正に特化してもよい感じはあるが、教育のところも人種問題という大きな別軸が絡んでくるからいいのかも。
最後に、訳者の望月衛。『天才数学者、株にハマる』でも読んでたはずだけど、本書の軽妙な訳は良かった。山形訳で読みたいと思う人は満足なはず。望月訳の『ブラック・スワン』も読んでみるかな。あともちろん『超ヤバい経済学』。