ソラリス ★★★★★★

ソラリス (スタニスワフ・レム コレクション)

ソラリス (スタニスワフ・レム コレクション)

時系列に沿った『ソラリス』との出会い

1) 最初はたぶん20年くらい前に見た、タルコフスキーの映画版。今となっては印象に残ってるのは首都高速で撮影した未来都市のシーンくらい。
2) 15年ほど前に、ハヤカワ文庫版『ソラリスの陽のもとで』を購入。オールタイムベストとして、今も手元にある。でも、そんなに強い印象は残っていない。
3) ソダ―バーグの映画版公開から2年後の2004年に、本エントリの完全版『ソラリス』が刊行。『SFが読みたい!』で2004年度10位に。ソダ―バーグの映画版は4年程前に見たので、このブログにも記録は残っている。
4) SFマガジン600号のオールタイムベストでソラリスが第 1位に、さらに昨年の『SF本の雑誌』オールタイムベストでも第 2位に入賞。
5) 話変わって、昨年からレムのメタフィクション虚数』『完全な真空』を読んできた。
6) 最近では珍しく、図書館の棚から偶然、本書を手に取ってみた。

感想

文庫版は既読だったので、まず解説から読んでみた。解説も力作で、この部分だけでも読む価値があるのだが。ともかく、文庫版がロシア語版からの重訳だったのは知っていたけど、欠落部分が10%近くもあったとは知らなかった。本書はもちろん、欠落の無いポーランド語完全版からの翻訳であり、できるだけ原文に忠実な翻訳を試みたとのこと。
で、実際に中身を読むと、なんとなく基本プロットはまだ覚えていたので、プロットだけでも意外性のある面白いSFだということを再確認しつつ... 今回補完された部分の、嘘ソラリス学蘊蓄の壮大な体系や詳細な記述が、ハードSFとしての核を成していることが良くわかった。数量にして10%の補完だが、質的には遥かに大きな意味があると思う。読む人にもよるんだろうけど。自分も昔だったら読み飛ばしていたかもしれないし。でも、ここを読むと『ソラリス』がもとになって『虚数』や『完全な真空』が産まれたことが容易に想像できた。そういう意味では、タルコフスキーやソダーバーグの映画が、レムにとって満足な出来でなかったのも当たり前で、そもそも『ソラリス』は、少なくともレムの望む形では映像化が不可能な作品だと言える。
7) e-honで在庫があったので発注した。図書館で借りた本でハードカバーを買うのは初めて。★6も初めて。ちなみに国書刊行会の本を買うのも初めて...