時の地図 ★★★★☆

続編の『宙の地図』が読みたかったので手を出した。2010の海外3位だが、たぶんSF度が低そうで当時は手が出なかった。

つまり、

 ヴィクトリア朝H.G.ウェルズが主役の時間SFっぽいのに、なんで青背じゃなくてNVなのかという、正しい疑問。

時の地図 上 (ハヤカワ文庫 NV ハ 30-1)

時の地図 上 (ハヤカワ文庫 NV ハ 30-1)

 
時の地図 下 (ハヤカワ文庫 NV ハ 30-2)

時の地図 下 (ハヤカワ文庫 NV ハ 30-2)

 

 作中の設定を借りれば、SFの核の外側をショートカットしてるみたいな。つまり四次元空間。

というか、(以下ネタバレ)

 三部構成の第一部、第二部はインチキ・タイムトラベルが骨格で仰天。

正直、第一部の途中まではバカSFみたいな展開にウェルズの人物説明が長くてイライラしていたが、ラストで吹いた。

さらに第二部。ちょうど上巻の巻末あたりで二度吹いた。後半お約束展開だけどニヤニヤ。

第三部はどうくるかと思ったが、まさかの正統SF。正統なオチだけに、ここだけ中編として抜き出したらそれほどではないが、前半2/3の重みがあるから活きる。あと、ネタがネタだけに、全巻を通してリアリズム作品と読めなくもない。

最近はSFを読みつくしつつあるだけに、境界圏が増えてきているなあという典型。

面白ければSFかどうかなど気にはしないのだが、時々は正統SFが読みたくなる...