虐殺器官 ★★★★★

id:nbt-nona:20070723で死蔵宣言していたが、長距離移動のお供に一気読み。
なにしろこのタイトルだから、表紙を外して読んだ...

評価は一言で言えばまさに衝撃のデビュー作!
円城塔と同時デビューは脅威!
彼らを最終選考で落とした小松左京賞の選考も意味がわからない!
ま、どちらも角川では出せるわけないわな...

大ネタはタイトルからも類推できる程度のもので、山田正紀あたりの日本SF伝統的なアレ。

しかし本領は、9.11以降の世界の実情と有り方について痛いところをズバズバとついてくる超社会派SFである。円城塔に比べれば難解でも何でもなく、大きなサブテーマとして、イーガン的な自己のあり方、IT&セキュリティについてもハードな論考がなされている点も加味したい。ていうか、帯のそこのところのアオリ(by大森望)につられて買った。もともと図書館で借りてすまそうと思っていたのだけど...また、一見どうでもよさそうなガジェットも後半で一つのサブテーマとしてとりあげられているし、英語で出版してアメリカ人に読ませたいものである。個人的には結末はすんなり受け入れられた。むしろ当然の帰結だ。と、思えるような罪を自分は背負っているわけだ。

今年のベストを円城塔と競うのに疑いない作品である。でも、売り上げはこっちの勝ちかなぁ、ジャンル外の人でも読めるだろうから。オールタイムベストでは、本作は時事性から言って10年後には忘れ去られているかもしれないけど、忘れ去られてない可能性の方が恐い...