あしたのロボット ★★★☆☆

あしたのロボット

あしたのロボット

ロボットをテーマにした連作中篇集。世界観は共通だが、著者あとがきでも述べているように異なるテーマを扱った5作品が収められている。ある意味、瀬名版『プルートゥ』? 鉄腕アトムは共通のキーワード。

しかし.....
この本、感想が書きにくい。

掲載誌が「小説すばる」と「別冊文藝春秋」だから、想定読者は一般小説読みのはず。でも自分はSF読みだからSFとして読んでしまうと、瀬名作品独特のSF的食いたりなさが残る。『パラサイトイブ』とは、また違った意味で。

著者あとがきの

多くのSF作品では作家と読者の間の了解事項として説明が省略されがちな問題を、この連作ではあえて丁寧に取り上げている。

という姿勢は強く感じられるけど、一般小説的枠組みで様々な問題提起がされてて、それに対する回答が与えられないまま終わるような感じ。答えがあれば良いってものでもないんだけどさ。なんだか全然的外れな感想のような気もするが、正直、あまり好きな作品集ではなかった。ていうか、そもそもロボットに拘る理由が最後まで良くわからなかった...

個々の作品を見ると「ハル」の主張が最も明解か。

「夏のロボット」のオチが最も悩む。村上春樹がこれを書いたと思いこめば悩まないのだがw
「見護るものたち」のシビアなテーマ(地雷処理)は特に印象に残った。

「亜希への扉」でガックリ。タイトルを見た瞬間に嫌な予感はしたのだが。

「アトムの子」はタイトル通り、手塚オマージュ度Max.

読み終わってから知ったが『SFが読みたい2003』第5位。図書館で借りた。26冊目@第19週。