デカルトの密室 ★★★★★

デカルトの密室

デカルトの密室

『SFが読みたい!2006』第2位。図書館で予約待ち2名を経て借りた。

ずばりイーガン、チャン*1と真っ向勝負で互角の内容。特にチャンの中篇、超知性のアレに似た箇所も有り。知能、自我がテーマのSF&ミステリィ

瀬名秀明の作品を読むのは『パラサイト・イブ』『BRAIN VALLEY』以来だったが、小説技術が格段に向上した印象。もとがwebでの連載ということもあろうが、冒頭のチューリングテストからグイグイ引きこみ、中盤以降の多面的哲学的思索につなぎ、最後*2まで一気に読ませた。

しかし、ミステリィとしては物語の最後まで力があるが、SFとしては終盤を前に終わっている感じが無くも無い。前記二作のドタバタに比べれば遥かに好きなエンディングではあるのだが。

さて、他作品との比較をしてみたいのだが、『ハイドゥナン(id:nbt-nona:20060411)』と比べると非常に微妙な争いだが、ベスト10投票なら本作を上位に入れるかも。というわけで本作も文庫化されたら買うのかな? また、豊作だった2003年(id:nbt-nona:20060216)との比較では、やっぱり今年の方が豊作なのかも。『神は沈黙せず』は、あそこまで話を長くする必然性を感じない。
しかし、やっぱり『老ヴォールの惑星(id:nbt-nona:20050810)』が今年の1位は、いまひとつ解せん。再読してみようかな。

23冊目@第16週。

*1:二人とも作中で名指し

*2:山田正紀か筒井康孝か。そういえば著者も以前の作品で物語の力を語っていたらしいが未読。